CG Magic:レンダリング

by ますお

長い事気になっていた「CG Magic:レンダリング」をようやく読みました.

cgmagic.net

結論から言いますと,素晴らしい本です!

“The Landscape of Computer Graphics Technology”という副題が付けられているのですが,これがまさにその通りで,部分発生的に発展したCG技術群を,同じ土俵に並べて俯瞰的に観察し,体系的に学ぶ事ができるようになっています.

最初,著者であられる倉地さんの某雑誌での連載をまとめたものだろうとタカをくくっていたのですが,実はかなり加筆されているようです.全体をテーマに沿ってまとめ直しもされています.

特に第一部の,BRDFから始まり,GI,volume renderingを経てsubsurface scatteringに至るまでの過程が本当にスバラシイ.「光とは何か?」「レンダリングとは何か?」という基礎であり本質の部分をキッチリと説明されていて,しかも理論本にありがちな理論だけで終わってしまうような事はせず,それがどのように使われたかという実践部分にまでちゃんと触れられています.これがある事で理解の度合いが桁違いに深まります.読み進んで行くうちに点と点が繋がっていくあの感じです.

ただし,これはやはり技術書なので,誰にでも簡単に読める物ではないと思います.きちんと理解するには最低限の数学及び物理の知識(高校くらい?)は要求されますし,ある程度のセンスも必要でしょう.それでも自分は皆に勧めます.いつもは論文の表紙でしか名前を見ないような人達が何を考え,どんな問題を解決しようとしてきたのか,大げさに言えば彼らの奮闘の歴史を知るだけでも楽しいです.ええ,オタクな視点ですけど(笑).

個人的な予想ですが,これから先,シェーディング及びライティングはより物理的というかもっと本質的な考え方を元にデザインされるようになるだろうと思っています.それが一般化してツールに標準搭載になった時,ユーザにもある程度その仕組みの理解が求められるようになるでしょう.その時に力となるのはやはり基礎となる学問的な知識であり,ツールのボタンの押し方ではありません.ツールは理論を元に作られています.画家が絵の具や筆の性質を知っているように,我々もツールの裏にある理論を多少なりとも知るべきです.

今回はテーマをレンダリングに絞って書かれていますが,今後は違う分野,例えばシミュレーション編とかも是非出して欲しいですね.

英語版も出るそうです.これもスバラシイ!

このような本が日本から出版された事を嬉しく思います.