群ようこさんのこの本に,興味深い事が書いてありました.
この本自体は,本にまつわる沢山の短編が収められているエッセイ集なのですが,最後の章に,「活字の匂い – 精興社見学記」と題された,著者が精興社という活版印刷所を訪れて見聞きした事と,その時の座談が収められています.これがとても興味深い内容でした.
活版印刷がどういう物か,知識としては知っていましたが,その工程ごとに沢山の手間と職人技,そしてセンスが必要であった事に驚きました.精興社は文字も独自の字体を二年もかけて作成したのだそうです.
この本は文庫で,基本的には写植の文字で印刷されているのですが,上記の精興社の章だけはなんと活版を使って精興社で刷られており,字体も精興社の物になっています.字体に非常に見覚えがあるので,恐らく気付かないうちに色々な本で見ていたのだと思いますが,今まで全く気にした事がありませんでした.
精興社の字体は一言で言うと味のある,とても人間味溢れる感じがします.いわゆるフォントの文字とは随分違った印象を受けます.小説などにはとても合うだろうなと思います.
しかし,この本はもう十年以上も前の本なのですが,それでももう文庫本などの安い本は写植が当たり前の時代になっていたようで,座談には,活版はコストと時間がかかり過ぎるために事業を縮小するしかない,と書かれています.そして現在,精興社はもう営業をしていないそうです.
精興社という会社その物はもう無くなってしまったのかも知れませんが,彼らの持っていた技術,そして何よりも精興社書体が,どう言った形にせよ保存されている事を切に希望します.
追記(4/15/2005):
ぺこさんのコメントより,精興社はまだ営業を続けている事を教えて戴きました.ウェブページもあります.お詫びして訂正致します.
株式会社 精興社ホームページ

3 Comments
精興社はなくなってなどいません。確かに活版印刷自体はもう行っていませんが、活版印刷の時代の質の高さを保っています。川上弘美さんの新刊だって、精興社です。まだまだ現役です。
ちょっとびっくりしてコメントをのせてしまいました。
本の後ろにご注意を。精興社は生きています。
ぺこさん,こんにちは.コメントと御指摘,有難う御座います.
本当ですね,精興社,まだ営業していますし,ウェブページもしっかりありますね.
この記事を書いた時にあんなに探したのに,なんでみつからなかったんだろう…
本文にも訂正を載せておきます.
訂正をして頂きましてありがとうございました。